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M&Aの相場とは?売買価格の決め方を徹底解説

2020.06.26 M&A知識

M&Aを行うに際して、気になる部分の一つが売買価格です。

とくに売り手にとっては、ご自身の会社がどのくらいの価格で売れるかはあらかじめ知っておきたい部分でしょう。

そこで今回は、売り手が一般的な中小企業のさいの相場や、相場を算定する際に用いられる計算式などをご紹介します。

M&Aの相場とは

一般的にM&Aの相場といったときは、会社や事業の「平均的な売買価格」や「適正な売買価格」を意味することが多いです。

言い換えると、ある時点における売り手企業の値段を表します。

最終的な売買価格は、売り手企業の事業内容や過去の業績、成長性、買い手企業とのシナジーなど、あらゆる要素によって変動します。

そこで実務では、そうした要素を考慮した上で企業価値(または事業価値)を算出し、その値段を基準にして売買価格を決定します。

したがって、企業(事業)価値を計算すれば、自社がM&Aを行う際の相場(≒大体どのくらいの値段で売れるか)を把握できるわけです。

最終的には買い手と売り手の合意で決まる

M&Aの価格は企業(事業)価値がベースとなって決まるものの、最終的には買い手と売り手の合意により決定します。

極端な話ですが、売り手の企業価値が低くても、買い手が高い値段を出す意思を示せば、その値段でM&Aは成立します。

反対に、たとえ企業価値が高くても、買い手が興味を示さなければ、M&Aは成立しません。

つまり、M&Aの相場は100%当てになるわけではありません。

一般的な相場価格と実際のM&A価格は、必ずしも一致するわけではない点には注意しましょう。

相場を知っておくことが重要な理由

M&Aの相場が100%当てになるわけではないものの、相場を知ること自体は非常に重要です。

なぜなら、相場を知らなければ適正な価格でM&Aを行えないからです。

そもそもM&Aでは、極力高い値段で売却したい売り手と、安い値段で買収したい買い手の意向が真っ向からぶつかります。

そのため、互いが主観だけで話し合うと話は平行線となり、M&Aは中々成立しません。

そこで重要となるのが、売り手企業の適正価格(相場)を算出しておくことです。

適正な相場をベースに話し合いを進めることができるため、買い手と売り手双方が納得できる値段でM&Aを成立させやすくなります。

相場を上回る価格で売却するには

一般的には相場に近い値段でM&Aは成立するものの、中には相場を大幅に上回る値段で売却が成立するケースもあります。

相場を上回る価格でM&Aを成立させるには、財務諸表には載っていない価値(強み)を売り手が持っていることが重要です。

たとえばブランド力や希少な技術、優秀な人材など、こうした資産は利益に直結する強みである一方で、財務諸表には掲載されません。

そのため、後述するような相場算定方法では、こうした強みを加味した売買価格を算出するのは難しいです。

裏を返せば、こうした目に見えない強みを買い手に認めてもらえれば、相場よりも高い値段で売却できる可能性は十分あるのです。

一般的な中小企業のM&A相場

一般的な中小企業(成長が横ばい・社歴が長いなどの特徴を持つ企業)では、時価換算した純資産に、3〜5年分の営業利益を足した金額がおおよその相場となります。

  • 中小企業のM&A相場 = 時価純資産 + 営業利益 × 3または5

たとえば時価純資産が2,000万円、年間の営業利益が300万円の中小企業のM&A相場は下記の通り計算できます。

  • 2,000万円 + 300 × 3 = 2,900万円

手軽に計算できるため、大体どのくらいの値段で売却できそうかを判断する上では、とても役に立つ方法です。

ただし、将来的な収益性などを考慮していないため、より正確な相場を知りたいときは、次章で紹介する方法を活用しましょう。

参考:中小企業のM&A【メリットや手順、成功させるポイントを解説】

会社・事業の売買価格の相場を算定する方法

M&Aの実務では、主に下記3つの方法で売買価格の相場(適正価格)を計算します。

時価純資産法

時価純資産法とは、時価換算した純資産をそのまま売買価格の相場とする方法です。

営業利益を加えないだけで、先ほど紹介した相場算定方法と同じものです。

具体的な計算の流れは下記の通りです。

  1. 資産と負債を時価換算する
  2. 時価換算した資産から負債を引いて時価純資産を算出
  3. 時価純資産を売買価格とする

簿価純資産(帳簿に記載された純資産)をそのまま使うと、会社の実態とはかけ離れた相場を計算するおそれがあります。

というのも、回収不能額を含む売掛金などのように、帳簿の価格と実態の価格が異なる資産があるからです。

そこで、時価純資産に直した上で計算することで、実態に即した売買価格を計算できます。

このように実態に即した相場を手軽に計算できる一方で、将来的な収益性を一切考慮していない点がデメリットとなります。

したがって、今後の成長が期待できるベンチャー企業の相場算定にはあまり向いていません。

DCF法

DCF法とは、将来的に得られるフリーキャッシュフロー(通称FCF)を現在価値に直し、それを基に売買価格の相場を計算する方法です。

将来的な収益性を加味するため、成長途中の企業のM&Aには最適な手法です。

ただし、フリーキャッシュフローの計算や現在価値への割り引きなどを行わなくてはならないため、専門知識や複雑な計算が必要です。

また、将来的に得られるFCFは、売り手企業の事業計画書を使って計算します。

そのため、計画書の内容次第では、実態とはかけ離れた売買価格となるリスクがあります。

類似会社比準法

類似会社比準法とは、評価対象の会社と類似する事業を行う上場企業を基準に、売買価格の相場を計算する方法です。

具体的には、類似する企業のPERやEBITDAなどの株価指標を用いて、売買価格の相場を計算します。

事業内容が類似する企業をベースにするため、とても客観性の高い相場を算出できます。

ただし、自社と類似する事業を行う上場会社がいないときは、この方法を使ってM&Aの相場を計算することはできません。

まとめ

売り手と買い手の双方が納得できる売買価格を決定するために、M&Aの相場を知っておくことは非常に重要です。

事業や会社の売却を検討中の売り手経営者様は、ぜひ一度ご自身の会社の売却相場を計算してみてはいかがでしょうか?