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事業譲渡とは?手続きの流れや税金を徹底解説!

2020.12.09 M&A知識

2018年度版中小企業白書によると、全体のうち41%の中小企業が事業譲渡の手法でM&Aを行ったとのことです。

株式譲渡と並んでメジャーな手法であるため、M&Aを行うに際しては事業譲渡について知っておくのが重要です。

今回の記事では、事業譲渡のメリットやデメリット、手続き、課税される税金などを分かりやすく解説します。

事業譲渡の概要

事業譲渡とは、一部の事業のみを売却・買収するM&Aの手法です。

ここでいう「事業」とは、「ある特定の目的を達成するために必要となる、一連の資産の集まり(固定資産や人材、ノウハウ、ブランドなど)」を意味します。

株式譲渡との違い

株式譲渡との違いは、売買する範囲にあります。

事業譲渡では、会社の中にある一部分の事業のみを売買します。

一方で株式譲渡では、事業ではなく売り手企業が発行している株式を売買します。株式会社において株式は意思決定に携わる権利であるため、一定数以上の株式を売買することで経営権の移転が可能です。

以上の違いがあるため、事業譲渡は一部の事業のみの売買、株式譲渡は会社丸ごとの売買を目的として活用されるのが一般的です。

関連記事:事業譲渡と株式譲渡の違いとは?5つの違いを徹底解説!

会社分割との違い

会社分割との違いは、M&Aを行う目的にあります。

主に事業譲渡は、単純な事業の売買により、事業の成長や主力事業への集中などを目指す目的で活用されます。

一方で会社分割は、会社の一部を切り離したり統合することで、グループ経営の効率化やコスト削減を実現する目的で活用されるケースが多いです。

詳しくは割愛しますが、会社法や税法の規定でも事業譲渡と会社分割は明確に区別されています。

そのため、必要な手続きや税金にも大きな違いがあります。

関連記事:事業譲渡と会社分割の違い【4つの違いを解説!】

事業譲渡を選ぶメリット・デメリット

次にM&Aのスキームとして事業譲渡を選ぶメリットとデメリットを解説します。

事業譲渡のメリット

事業譲渡で売り手が得られるメリットは以下のとおりです。

  • 一部分のみを売却できる(業績の改善や資金調達、主力事業への集中を実現できる)
  • 法人格を引き続き残すことが可能
  • 負債を抱えている企業でもM&Aを行える

一方で買い手が得られるメリットは次のとおりです。

  • 必要な事業のみを買収することで、買収資金を最小限に抑えることが可能
  • 簿外債務や偶発債務の引き継ぎによるリスクを軽減できる

事業譲渡のデメリット

売り手が注意すべき事業譲渡のデメリットは以下になります。

  • 譲渡した事業と同種の事業を、20年間同じ地域・隣接地域で行えない(競業避止義務)
  • 株式譲渡と比べて面倒な手続きが多い(時間や手間がかかる)

一方で買い手は、以下に挙げたデメリットに注意しなくてはいけません。

  • 引き継ぎたい契約や資産、許認可について1つ1つ個別に手続きをする必要がある
  • 株式譲渡では不必要な消費税が課税される

事業譲渡の手続き

事業譲渡の手続きは、大きく「検討〜契約締結の手続き」と「株主に関する手続き」、「財産や契約の名義変更・移転手続き」の3種類に大別されます。

この章では、それぞれの具体的な手続きの内容をご紹介します。

検討〜契約締結の手続き

他のM&A手法と同様に、M&Aの検討や交渉、契約といった手続きを経なくてはいけません。

具体的に行うべき手続きは、主に以下のとおりです。

  • M&Aの検討と準備(目的の明確化やスケジュールの策定など)
  • M&A仲介会社との契約締結
  • M&Aの相手探し
  • トップ面談
  • 条件面の交渉
  • 基本合意書の締結
  • デューデリジェンスの実施
  • 事業譲渡契約の締結

見て分かる通り、契約締結までに膨大な手続きを要します。

ただ単に数が多いだけでなく、1つ1つの手続きに専門知識を要するため、経営者と従業員のみでM&Aを進めるのは難しいです。

スムーズに事業譲渡の手続きを進めたいならば、実績があるM&A仲介会社のサポートを得るようにしましょう。

株主に関する手続き

事業譲渡では、株主の権利や利益を保護するための手続きがいくつか必要となります。

具体的に行うべき手続きは以下のとおりです。

  • 株主への通知または公告
  • 株主総会の特別決議
  • 反対株主の買取請求

ただし特別決議に関しては、「事業の全部譲渡」、「重要な一部の譲渡(譲渡する資産の簿価が、売り手が持つ総資産額の5分の1を超える事業譲渡)」、「事業の全部譲受け」に該当しなければ不要です。

財産や契約の名義変更・移転手続き

前述したとおり、事業譲渡では引き継ぐ財産や契約に関して、個別に名義変更や移転の手続きを行わなくてはいけません。

たとえば従業員との雇用契約を引き継ぐ場合には、買い手側が引き継ぎたい従業員1人1人と雇用契約を新たに結ぶ必要があります。

移転する範囲によっては、膨大な手続き量となります。

したがって事業譲渡を行うときは、余裕を持ったスケジュールを設定しておくのが好ましいでしょう。

関連記事:事業譲渡の手続き【流れを分かりやすく解説】

事業譲渡の税金

事業譲渡では、法人税等と消費税という税金が課税されます。

この章では、それぞれの概要や計算方法をご説明します。

法人税等

事業譲渡で対価を得た売り手には、法人税等(法人税、地方法人税、法人住民税、事業税)が課税されます。

法人税等は、「譲渡金額 − 譲渡事業に係る純資産」で計算された金額(譲渡益)に課税されます。

法人税等には総合課税方式が適用されるため、事業譲渡で得られた譲渡益と本業の事業所得などを合算した金額をもとに税額を計算する必要があります。

また法人税等の実効税率は、所得の金額や法人の種類などによって異なります(大体30%前後)。

以上をまとめると、事業譲渡における法人税等を求める式は以下のとおりです。

※以下の式は、簡略化するために事業所得などを考慮しておりません。

  • 法人税等 = 譲渡益 × 実効税率(約30%)

消費税

事業譲渡では資産の売買が行われるため、日々の取引と同様に消費税が課税されます。

ただし消費税は、売り手ではなく買い手側に課税されます。

消費税は、事業譲渡で買収した資産のうち「非課税資産」を差し引いた部分に課税されます。

非課税資産とは、消費税法に規定された消費税が課税されない資産の総称であり、主に以下が該当します。

  • 有価証券(債券や株式、手形など)
  • 土地
  • 債権(貸付金や売掛金など)

以上より、事業譲渡で課税される消費税を求める式は、以下のとおり表せます。

  • 消費税 = (譲渡金額 − 非課税資産) × 実効税率(約30%)

事業譲渡のまとめ

一部の事業のみを売買する上で、事業譲渡は非常に役立つM&A手法です。

ただし手続きは複雑であるため、かならず専門家の協力を得た上で行うようにしましょう。

弊社でも事業譲渡によるM&Aについて、サポートを行っております。

ご相談は無料ですので、事業譲渡を検討している方は一度ご連絡していただければ幸いです。

※参考文献

会社法 e-Gov

消費税法 e-Gov

2018年版「中小企業白書」全文 第6章:M&A を中心とする事業再編・統合を通じた労働生産性の向上 中小企業庁