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株式譲渡を社員に行うメリットとは?第三者に譲渡した場合の処遇も解説!

2020.11.20 M&A知識

一般的に株式譲渡は、他の会社や外部の経営者に行うのが一般的です。

しかし一方で、中には自社の社員を対象に株式譲渡を行うケースもあります。

今回の記事では、社員に株式譲渡するメリットやデメリットを詳しく解説します。

併せて、第三者に株式譲渡した場合に社員がどうなるかについても解説します。

社員に株式譲渡を行う目的

社員に株式譲渡を行う目的は、主に事業承継です。

現在多くの中小企業では、経営者の高齢化により事業承継のタイミングを迎えています。

しかし子供や孫が会社を引き継がないケースが増えており、経営者にとって悩ましい事態となっています。

そこで注目されているのが、社員への株式譲渡です。

社員に株式譲渡を図れば、自社の経営権をその社員に移転することが可能です。

なお広義の意味では、モチベーションの向上などを目的に、自社株の一部を社員に渡すことも株式譲渡に含まれます。

ただし今回は、経営権の移転を目的にほとんどすべての株式を譲渡するケースを解説します。

社員に株式譲渡するメリット

第三者に株式譲渡するケースと比較して、社員への株式譲渡には下記2つのメリットがあります。

経営者としての能力がある後継者に事業承継しやすい

子供や孫の場合、自社の業務をほとんど知らなかったり、経営者としての知識や経験がなかったりと、経営者としての能力がない可能性があります。

一方で社員であれば、長年自社で働き続けていたり、役員として自社の経営をサポートしてきているため、経営者として必要な実務能力やセンスなどが培われている可能性が高いです。

そのため、経営者としての資質や能力を有する後継者を選びやすいといえます。

取引先や顧客、他の社員から新しい経営者を認めてもらいやすい

第三者への株式譲渡を行うと、これまで面識がなかった人物が突然経営者となります。

新しい経営者が取引先や顧客、社員から認めてもらえず、取引を打ち切られたり、社員が離職するリスクがあります。

一方で社員への株式譲渡であれば、取引先や他の社員が知っている人物が後継者となります。

その結果あたらしい経営者がスムーズに認められ、会社の経営に支障をきたす事態を回避できるわけです。

社員に株式譲渡するデメリット

一方で社員への株式譲渡には、以下にあげた2つのデメリットもあります。

社員への株式譲渡を検討している方は注意してください。

シナジー効果を得られない

第三者に対して株式譲渡を実施すると、売り手と買い手が持つ強みや経営資源が組み合わさることで、コストや技術面などで大きなシナジー効果を得られます。

一方で社員への株式譲渡の場合、自社の社員に経営者が交代するだけなので、本来M&Aで得られるはずのシナジー効果は発生しません。

ただ単に経営者が変わるだけであるため、時代の変化への対応が疎かになり、業績が悪化するケースもあるので注意しましょう。

後継者が株式を買収できるだけの資金を持たないリスクがある

他の会社や優秀な経営者の場合は豊富な資金力を持っているため、自社の株式を買収する資金の確保に苦労するケースは少ないです。

一方で自社の社員への株式譲渡の場合、自社株式をすべて買収できるだけの資金を後継者である社員が持っていない可能性があります。

一般的なサラリーマンに対して、数千万円〜数億円にのぼる買収資金を捻出させるのが困難なのは、容易に想像できるでしょう。

「無償での株式譲渡」や「銀行からの買収資金の調達」といった対策はあるものの、こうした方法にもデメリットやリスクはあるので簡単ではありません。

第三者に株式譲渡を行うと社員はどうなる?

上記のデメリットを解消できそうにない場合、第三者への株式譲渡を行うのが無難な選択肢となります。

では一体、第三者に株式譲渡すると社員はどうなるのでしょうか?

この章では、第三者への株式譲渡(M&A)による社員の処遇について解説します。

雇用契約自体は自動的に引き継がれる

株式譲渡は経営権を持つ株主のみが交代するM&A手法であり、それ以外には何も変化は生じません。

よって事業譲渡とは異なり、株式譲渡で経営権が買い手の会社に移っても、雇用契約自体は自動的に引き継がれます。

買収後しばらくしてリストラされるなどの事態はあり得るものの、少なくとも株式譲渡の時点では、一部の社員のみが引き継がれないなどの心配はありません。

処遇は維持または向上するのが一般的

雇用契約は引き継がれるものの、社員の処遇(給与や働き方など)をどうするかは買い手次第です。

「うちの社員がぞんざいな扱いを受けないか心配」と考える経営者もいますが、ほとんどのケースでは社員の処遇は維持または向上します。

というのも、買い手にとって売り手から引き継ぐ社員は、事業を行う上で不可欠な存在だからです。

事業に必須のノウハウや技術を持つ社員をぞんざいに扱って、離職したり生産性が下がってはM&Aのメリットが失われます。

そうならないために多くの買い手は、なるべく社員が快適に働けるように、これまでの処遇をほぼ変えない、もしくはより良い処遇を行うわけです。

経営者が交代することでモチベーションの低下や離職する可能性がある

処遇が悪化するケースはほぼないものの、経営者の交代により社員のモチベーションが低下したり、離職したりするリスクはあります。

社員にとっては、得体が知れない経営者のもとで働くことを強いられる形となります。

たとえ処遇が悪くなくても、どうしても不満が溜まってしまう社員は出てきます。

このような事態を回避するには、あらかじめ買い手経営者が売り手の社員とコミュニケーションを図り、安心してもらうことが重要です。

まとめ

主に社員への株式譲渡は、事業承継を目的に行われます。

親族に後継者がいない場合に、社員への株式譲渡は重宝するでしょう。

ただし、通常のM&Aとは違いシナジー効果を得られない上に、買収に必要な資金を確保するのが難しい点がデメリットとなります。

こうしたデメリットを解消できそうにない場合には、第三者への株式譲渡がベストです。

経営者の交代により社員のやる気が低下するリスクこそあるものの、自動で雇用契約を引き継げるため、社員が職を失うリスクはありません。

第三者への株式譲渡を検討している方は、ぜひお気軽に弊社にご相談ください。