廃業を考える前に債務整理はできる?実例をもとに解説!

2021.10.17 会社・事業を売る

経営がうまくいかず、廃業を考えている状況であっても、債務整理により借金を減額できる場合があります。今回は債務整理について、具体的な事例を交えながら分かりやすく解説していきます。

債務整理とは

債務整理とは、借金の元本を減額する、支払期間を猶予してもらうなど、借金から解放してもらう手続です。債務整理は、以下のとおり3つの種類があります。

  • 任意整理
  • 民事再生
  • 自己破産

それぞれの内容を見ていきましょう。

任意整理とは

任意整理とは、金融機関や債権者に対して個別に交渉を行い、借金などの債務を返済できるようにする手続です。元本や将来の利息のカット、金利の見直し、毎月の支払い額の調整を行い、借金返済をしながら無理なく生活できるようになります。

任意整理は誰でも利用できるわけではなく、3年から5年にかけて借金を返済できる者に限られます。任意整理は最終的には借金を返済していく手続であることから、定期的な収入があるなど、借金返済の見通しが立っていることが重要です。

また、一度任意整理を行なってしまうと、ブラックリストに載ってしまうため、一定期間クレジットカードの発行やローンの実行ができなくなる点には留意が必要です。

任意整理は、破産と異なり、裁判所に申立を行わずにできる手続のため、より気楽に利用することができます。債務整理を考えている場合には、まずは任意整理ができないかどうかを検討してみると良いでしょう。

民事再生とは

民事再生とは、民事再生法に基づく再生手続です。スポンサーから借入や出資を受け入れ、スポンサー企業のもとで、事業を継続させ、経営を立て直すことができます。

スポンサーを見つけるのが難しい場合には、スポンサーなしで自力で再生に向けた手続を実施することもあります。ただし、スポンサーがいない場合には、将来の収益基盤が安定しており、銀行などできちんと借金返済できる見通しを示すことができるかがポイントです。金融機関へ再建計画を説明する時は、きちんと合理的な説明ができるよう綿密に準備しておかなければなりません。金融機関が納得しなければ民事再生を行うことは困難になってしまうためです。

民事再生の手続は、主に以下のような流れで進みます。

  1. 裁判所に民事再生を申し立てる
  2. 裁判所にて再生手続の開始決定がなされる
  3. 裁判所へ貸借対照表と財産目録を提出する
  4. 再生計画案を作成する
  5. 債権者集会にて再生計画案の承認を受ける
  6. 裁判所にて再生計画案件の認可される

以上のとおり、民事再生は裁判所を通す手続となり、手続完了まで半年程度の時間がかかります。実際に民事再生を行う際は、費用はかかりますが、弁護士などの法律の専門家のサポートが必要不可欠です。スポンサー探しについても、自力で探すあてがない場合や数々の手続を処理することが難しいケースでは、各種機関やコンサルティング会社などから支援を受けることもできます。民事再生は、借金の額が大きいが今後の事業継続できる見込みが高い場合に適用する手続となります。

上記の民事再生の他に、個人再生と呼ばれる民事再生を簡略化した手続があります。個人再生は個人事業主を対象にした再生手続で、住宅ローンを除いて借金が5,000万円未満の際に利用することができます。個人再生も民事再生と同様に、借金を減額することができる可能性はありますが、今後の収入によって一部の借金を返済する必要がある点は注意が必要です。

自己破産とは

自己破産とは、負債が多いなど、借入金の返済が見込めない場合、裁判所に認めてもらうことで借金返済の義務を免れる手続です。自己破産することで、原則として個人の借金を返済する必要がなくなるため、収入を生活のために充てることができます。

自己破産は、任意整理や民事再生と異なり、借金を返済しなくて済むようになる点が大きなメリットです。一方で、高額な資産を所有している場合は全て処分しなければならず、自己破産によりブラックリストに載ってしまうので、今後数年間は新たなクレジットカード発行や新しい借金をすることができなくなります。例えば、住宅ローンによって自宅を保有している場合には、住宅ローンの返済義務はなくなりますが、担保に付されている自宅は手放さなければなりません。また、99万円を超える現金も自由財産とはみなされず、借金返済に充てなければなりません。その他、投資用の不動産や家を保有している場合には、当然ながら自己破産した際は自分の物ではなくなってしまいます。換価処分された財産は、債権者に配当されるため、債権者にとってみれば、回収するのが難しいと思われていた債権が一部お金になって弁済されることになります。

また、自己破産した場合には、官報にその情報が掲載されるため、破産した事実が公の情報になってしまう点も、自己破産のデメリットの一つです。また、破産手続は、民事再生と同様に、裁判所をとおす手続であることから、通常、半年から一年程度の時間が必要とされています。

自己破産や破産手続きを検討している場合、自分ひとりでtodoを整理し再建に向けた手続を進めていくのは難しくなるため、まずは倒産や破産に詳しい経験豊富な法律事務所に相談してみるようにしましょう。弁護士や司法書士への相談や裁判所への予納金など、自己破産にはある程度の費用がかかるため、資金繰りが悪化しお金が不足してしまう前に、早めに法律相談を行うことが重要です。

債務整理によるメリット

任意整理、民事再生、破産を行うことで、借金返済の期間を伸ばす、元本を減額したりゼロにしたりすることができます。任意整理や民事再生を行うことで、廃業寸前の状況であったとしても、事業を継続させることができます。破産の場合は借金返済をしなくて済むようになりますが、事業を継続させることはできず、経営者の保有する高額な財産は全て没収されてしまう点が、他の手続との大きな違いです。

自分が今後どうしたいのかを考えた上で、債務整理を行うのか、債務整理を行う場合にどの手続を選択するのかを決めていく必要があります。

M&Aでも買い手に借金を引き継いでもらうことができる

債務整理とは異なりますが、M&Aにより自社を売却することで、買い手に自身が負っている借金を引き継いでもらうことも可能です。たとえ会社が債務超過の状況であったとしても、将来の成長が見込まれ、シナジーのある買い手であれば廃業した場合よりも高い企業価値で買収してくれるかもしれません。M&Aが成功すれば、借金の問題を解決させることができるのです。

ただし、M&Aは事業売却のプロセスを進めれば、法人や事業を誰でも売却できるという保証はありません。また、すぐに買い手が見つかることも少なく、準備の時間も含めて、最低でも3か月程度の時間は必要でうs。

M&Aマッチングサイトに登録する、仲介会社やFA、コンサルティング会社に相談するなど、債務整理の前にM&Aの可能性を検証してみることがおすすめです。初回の相談は無料で行っている会社もあるため、アドバイザーなどへまずは気軽に依頼してみることがおすすめです。

まとめ

債務整理は、任意整理、民事再生、破産の3つの種類があり、廃業ぎりぎりの経営状況であったとしても実施することができます。ただし、どの手続も半年程度の時間は必要ですので、利益やキャッシュフローや現金残高を鑑み、早めにアクションしていく必要があります。時間切れになってしまえば、M&Aだけでなく、債務整理での対応もできなくなってしまう恐れがあるためです。

債務整理でも借金の減額やゼロにすることはできますが、もう一つの選択肢として、M&Aが挙げられます。M&Aであれば、廃業した場合に比べて、会社売却や事業売却により、廃業したケースよりも高い金額を得られる可能性があります。

廃業や債務整理だけでなく、自社の状況を見つめ直して、どのような選択肢を取れるかについて考えてみるのがおすすめです。