廃業の前にM&Aマッチングサイトを利用できる?事業売却の方法を解説!

2021.10.13 会社・事業を売る

日本では中小企業を中心に、高齢化やコロナの問題を理由に、全国的に廃業の数は増加傾向にあります。廃業を検討している場合でもM&Aにより会社や事業を売却できる可能性があります。今回は廃業寸前であっても、M&Aマッチングサイトを活用した事業売却について解説していきます。

M&Aマッチングサイトとは

M&Aマッチングサイトとは、M&Aの買い手と売り手をマッチングできるインターネットを介したサービスです。ベンチャー企業や大手M&A仲介会社などが運営しており、従来のM&A仲介会社よりも手数料が安い点が特徴です。M&Aを実施した買い手と売り手が集まるプラットフォームであり、実績のあるサービスが数多く登場してきています。買い手にとって、売りに出されている豊富な案件の一覧を、一度に確認できるため、シナジーを創出できそうな案件を効率的に探すことができます。

一方で、仲介やアドバイザーサービスはないため、自力でM&Aを進めるか、一般的には、別途専門家を起用することが必要です。M&Aへの専門家の依頼は、M&Aが成約した場合に成功報酬を基本とした費用を支払う必要があります。手付金や相談料はかからないケースも多いため、専門家に問い合わせる際には、報酬体系について質問しておくと安心して依頼することができます。

また、M&Aマッチングサイトのもう一つの特徴として、幅広い案件が登録されていることが挙げられます。100万円未満の案件も登録されており、個人でも簡単にM&Aを行うことが可能になっています。そのため、買い手候補も個人から法人まで幅広く、数多くの候補者に自分の会社や事業をアピールすることができます。

廃業前に自社の状況を整理することが重要

後継者がいないことなどを理由に廃業を考えている場合、まず実施すべきことは自社がどのような状況なのかを把握することです。自社の貸借対照表を清算価値に引き直し、資産超過になるのか債務超過になるのかで大きく道が異なります。資産超過のケースでは、オーナー経営者にとって、廃業することでお金を残せることを意味しています。一方、債務超過であれば、何らかの形で廃業後も負債が残ってしまいます。廃業後の事業などで、その負債を返済していく必要があります。

また、企業が利益を出せているのかも廃業するか否かの重要な意思決定要素となります。売上ー売上原価ー販売費及び一般管理費=営業利益ですが、この営業利益の金額に注目してみましょう。自社の都合などで調整が加えられている場合は、正常収益力を把握するため、調整計算が必要です。

例えば、オーナー経営者自身の役員報酬が高額な場合、会社に関係のない費用が混ざってしまっている場合などは調整を行なった上で、営業利益を再計算します。再計算後の営業利益が黒字だった場合、焦って廃業する必要はありません。営業利益が少しでも黒字であれば事業は永続できるため、時間的猶予があります。一方、営業利益が赤字になってしまった場合には、早急に何かしらの対策を打つ必要があるでしょう。赤字が続いてしまえば、いずれ現金が尽きてしまい、倒産してしまうためです。

以上の結果、資産超過で利益も出ている状況なのであれば、すぐに廃業する必要はなく、M&Aで高額で事業売却することを目指すことができます。時間的猶予も大きく、交渉力も強いと言えます。また、債務超過であったとしても黒字であればM&Aを積極活用したいところです。債務超過のまま廃業してしまえば、借金が残ってしまいますが、M&Aであれば借入金も含めて買い手に引き継いでもらうことができます。

事業が赤字の場合には、手元資金の状況にもよりますが、自分の意思を決める時間は長く残されてはいません。M&Aにより早期売却を目指すか、状況によっては潔く廃業することが最もダメージが少ない選択肢である可能性もあります。

事業売却の手法

廃業前にM&Aを考える場合、会社全体の売却か事業ごとの売却か、2つの選択肢があります。

会社全体の売却

会社全体を売却する場合、株式譲渡によって譲受企業に経営権そのものを譲渡します。株式譲渡のメリットは以下のとおりです。

  • 借金も含めて譲渡することができる
  • 複数事業を営んでいる場合でもまとめて譲渡することができる
  • 譲渡対象資産が株式のみのため、手続が比較的簡便である
  • 従業員の雇用契約をそのまま買い手に引き継いでもらうことができる

他方で、会社全体を売却する場合、以下のようなデメリットも考慮しなければなりません。

  • 黒字事業と赤字事業が混在している場合、赤字事業の金額が大きければ企業価値全体が下がってしまう
  • 企業価値が低ければ売却できない可能性が高まる
  • 対象会社に簿外負債が存在している場合、買い主が引き継いでしまう

一つの会社で一つの事業しかしていない場合、借金をそのまま買い手に引き継いでもらいたい場合などには会社全体の売却を検討するのが良いでしょう。

事業ごとの売却

事業ごとに売却する場合、事業譲渡か事業を会社分割によってもう一つの法人とし、その株式を売却する手法があります。事業ごとに売却する場合のメリットは以下のとおりです。

  • 会社全体は売却できない場合でも、黒字事業など売却できる事業だけを選んで売却することができる
  • 借金を除いた純粋な事業だけを売却できるため、高値で売却できる可能性がある
  • 複数の事業を、それぞれ違う買い手に売却することができる
  • 事業ごとに従事している人材を買い手に引き継いでもらうことができる

一方、事業ごとを売却する場合のデメリットは以下のとおりです。

  • 譲渡する資産・負債が多ければ、買い手への引き継ぎに時間がかかる場合がある
  • 複数事業を一度に売却する場合、プロジェクトが複数走ることになるため、プロジェクト管理が難しくなる

一つの会社で複数のビジネスを営んでいる場合、事業ごとのPL状況が大きく異なっている場合などには事業ごとの売却を最初に検討してみることがおすすめです。

まとめ

廃業を検討しているような経営状態であっても、M&Aマッチングサイトを利用して会社や事業を売却できる可能性があります。M&Aを行うことで単に廃業した場合よりもより多くのお金や財産を残すことができるかもしれません。

廃業前に自身の経営している会社の状況を見極め、会社全体の売却か、事業ごとの売却が合っているかを検討してみることがお勧めです。M&A専門家のサポートや税理士や弁護士からの支援も得ながら、M&Aの可能性を追求してみてはいかがでしょうか。