事業を売却する方法とは?用いるM&A手法や手続きを解説!

2020.09.02 会社・事業を売る

事業売却とは、会社の経営権を手元に残しつつ、一部の事業のみを第三者に売却することです。

主力事業への集中や経営再建を理由に、事業売却を検討する経営者の方は増えています。

そこで今回は、事業を売却する方法について、用いられるM&A手法や手続きの流れを詳しく解説します。

一部の事業のみの売却を検討している方は、ぜひ参考にしてもらえればと思います。

事業売却で用いるM&Aの方法

事業単位で売却する場合、「事業譲渡」または「会社分割」のいずれかの方法が用いられます。

この章では、各方法の概要やメリット・デメリットをお伝えします。

事業譲渡

事業譲渡とは、会社にある事業の一部または全部を譲渡する形で事業売却を行う方法です。

必要な資産のみを選んで引き継げる利便性から、中小企業の事業売却ではもっとも活用されています。

売り手の視点から見ると、不採算事業を売却して主力事業に集中したいケースや、主力事業に必要な資金を獲得したいケースなど、あらゆる目的で活用できる点がメリットとなります。

買い手側のメリットは、引き継ぐ資産の範囲を限定することで、簿外債務や偶発債務などのリスクを引き継がずに済む点です。

しかし一方で、事業譲渡には「取引先や従業員との契約を一つ一つ契約し直す必要がある」というデメリットがあります。

会社分割

会社分割とは、事業に関して持っている権利や義務の一部または全部を包括的に承継させる方法です。

権利や義務をすでに存在する会社に承継する場合は「吸収分割」、新しく設立した会社に承継する場合は「新設分割」と呼ばれます。

また、承継する権利義務の対価をどこが受け取るかによっても、会社分割は二種類に大別できます。

権利義務を売り手企業(分割会社)が受け取る場合は「分社型分割」、売り手企業の株主が受け取る場合は「分割型分割」と呼びます。

つまり会社分割は、「承継先の会社」と「承継先が会社か株主か」によって、計4種類に分けられるのです。

事業譲渡と比較すると、契約を包括的に承継できる点が最大のメリットと言えます。

ただし、特別決議や債権者保護手続きが原則必須であるなど、総合的に見ると事業譲渡と比べると手続きは煩雑です。

そもそも、会社分割は事業売却というよりも、組織再編の方法というイメージが強いです。

したがって、事業譲渡と比べると事業売却の方法として用いられるケースは少ないです。

事業売却の進め方

あらかじめ正しい進め方を知っておけば、事業売却の手続きをスムーズに進めることが可能です。

この章では、事業譲渡のスキームを用いて事業売却を行う方法を、手順に沿って解説します。

M&A仲介会社への相談・契約

まずは、事業を売却する相手を見つける必要があります。

本業を行いながら自力で買い手を探すのは困難なので、M&A仲介会社に買い手探しをサポートしてもらうのが一般的です。

M&A仲介会社によって、手数料の体系やサポートの範囲、得意分野などは大きく異なります。

そのため、複数の仲介会社を比較して自社にとって最適な依頼相手を見つけるのが、事業売却を成功させる上で重要です。

仲介会社の多くは無料での相談に応じているので、まずは気軽に相談してみましょう。

買い手探し・交渉・デューデリジェンス

相談する過程で最適なM&A仲介会社が見つかったら、本格的に事業売却の手続きが始まります。

基本的には、仲介会社が自社の希望や事業内容などを基に買い手を探してくれるので、売り手企業がすべき手続きはありません。

買い手候補が見つかったら、具体的に交渉を進めていきます。

交渉では、売買金額や従業員の処遇といった項目はもちろん、経営理念のすり合わせなども行われます。

交渉が一通り完了したら、買い手が売り手企業のデューデリジェンスを実施します。

デューデリジェンスとは、財務や法務、税務などの観点から売り手企業が抱えるリスク等を買い手が調査するプロセスです。

売り手側では、財務諸表や事業計画書などの書類提出や仲介会社による実地調査などに応じる必要があります。

デューデリジェンスの結果を踏まえ、買い手はM&Aの実施可否や買収価格を決定します。

買い手の最終的な提案に売り手が賛成すれば、その後のプロセスを進めていきます。

取締役会での承認決議

残すは最終的な契約のみという段階に進んだら、取締役会にて事業売却を行う旨を決議します。

過半数の賛成を得られれば、事業売却の実施を進めることが可能です。

事業譲渡契約の締結

次に、買い手企業との事業譲渡契約を締結します。

事業譲渡契約書には、主に下記の項目を記載します。

  • 譲渡資産の詳細
  • 譲渡価額
  • 対価の支払い方法
  • 資産の引き渡し時期
  • 競業避止義務
  • 従業員の取り扱い

契約内容に不備があると、後から買い手とのトラブルに発展したり、大きな損失を被る恐れがあります。

トラブルや損失を回避するためにも、弁護士などの専門家に契約書を作成してもらうのがベストです。

株主への通知・株主総会の特別決議

事業譲渡の契約を正式に締結したら、その旨を株主に通知・公告する必要があります。

株主への通知・公告は、事業譲渡の効力が発生する日から起算して、20日前までに実施しなくてはいけません。

また、会社法第467条の規定により、下記のケースに該当する事業譲渡では原則「特別決議」が必要です。

  • すべての事業の譲渡
  • 事業の重要な一部の譲渡

なお「事業の重要な一部の譲渡」とは、譲渡資産が売り手企業の総資産額の5分の1を超える場合の事業譲渡を意味します。

参考:会社法第467条 e-gov

クロージング

特別決議が可決されたら、最後に対価の支払いや財産の名義変更といったクロージングを行います。

クロージングがすべて完了したら、事業売却の手続きは完了です。

まとめ

事業譲渡は、一部の事業のみ売却し経営権を手元に維持できる点では優れた手法です。

ただし、株式譲渡による会社売却と比べると、行うべき手続きは増える上に面倒です。

メリットとデメリットを十分検討した上で、会社売却にするか事業売却にするかを決めるのがオススメです。

弊社でも事業売却に関するご相談を無料で承っておりますので、事業の売却を検討中の方はぜひお気軽にご相談ください。

参考:事業売却とは?目的やメリット、相場、税金について徹底解説!