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M&Aにおけるクロージングとは?具体的な手続きも解説!

2020.11.30 M&A知識

条件交渉やデューデリジェンスなどの手続きを経て、最終的な契約を締結した時点で、売り手と買い手の間でM&Aに関する合意がなされたことになります。

しかし、実務上は契約が完了したからと言って、すべての作業が終了するわけではありません。

M&Aの契約が完了したら、かならず「クロージング」と呼ばれる作業が必要です。

そこで今回は、M&Aにおけるクロージングの意味や重要性、具体的な手続きをわかりやすくお伝えします。

M&Aのクロージングとは

はじめに、M&Aにおけるクロージングの意味や大事である理由、タイミング・期間をお伝えします。

クロージングの概要

クロージングとは、取引を完結させる行為を意味します。

M&Aにおいては、最終契約書の中身に従って経営権の移転や対価の支払いなどを遂行し、手続きを完全に終了させることがクロージングとなります。

クロージングがM&Aにおいて大事である理由

クロージングがM&Aで大事なのは、契約の締結だけでは双方の目的が達成されないからです。

たとえ契約を締結しても、買い手から対価の支払いがなされなければ、売り手は利益の獲得という目的を達成できません。

一方の買い手も、株式の交付や契約の移転などを果たさない限り、経営権を獲得したり事業を問題なく始めたりできません。

双方が目標を達成するには、契約後のクロージングは不可欠というわけです。

また、ただ単にクロージングの作業を遂行すれば良いというわけではありません。

クロージングの作業に不備が有ると、M&Aの効力自体を対外的に証明できなくなるリスクが有るからです。

したがって、M&Aを成功させるにはクロージングの作業を不備なく終わらせる必要が有るわけです。

クロージングのタイミングと期間

M&Aにおいてクロージングは、条件交渉やデューデリジェンスなどの作業を経て、正式に最終契約書を締結した後に遂行します。

契約締結の時点で、クロージングに係る準備がすべて完了していれば、契約締結と同じタイミングでクロージングの作業を遂行します。

ただしそれ以外の場合には、契約締結からクロージングまでにおよそ数週間から1ヶ月ほどの期間を空けるケースが多いです。

小規模なM&Aや株式譲渡による簡便なM&Aの場合は、契約と同時にクロージングを遂行するのが一般的です。

一方で手続きが複雑なスキーム(合併など)を用いるケースや大規模なM&Aでは、クロージングまでの期間が長期化する傾向があります。

関連記事:M&Aの流れ【検討段階からの手続きを徹底解説】

クロージングの具体的な手続き

クロージングの具体的な手続きは、利用するM&Aのスキーム(手法)によって異なります。

そこで今回は、代表的なM&A手法である「株式譲渡」、「事業譲渡」、「第三者割当増資」に関して、それぞれ必要なクロージングの作業をお伝えします。

株式譲渡におけるクロージング

株式譲渡によるM&Aは、あらゆる手法の中で最もクロージングに係る作業が少ないです。

具体的には、下記作業をクロージングとして遂行します。

  1. 売り手による株式の提出
  2. 双方によるクロージング書類(株主名簿など)の提出
  3. 買い手による対価の支払い
  4. 株主名簿の書き換えや実印などの受け渡し
  5. 臨時株主総会の開催による新役員の決定

簡単にいうと、必要な書類が揃っているか確認し、株式と対価を互いに交付し合えばクロージングは完了です。

名簿の書き換えや株主総会の開催などを含めても、1〜3日程度でクロージングは完了します。

事業譲渡におけるクロージング

事業譲渡によるM&Aでは、主に下記のクロージング手続きが必要です。

  1. 移転する権利義務に関して個別合意を得る
  2. 許認可取得や不動産の登記など
  3. 買い手による対価の支払い

一見すると株式譲渡よりも少ないですが、取引先や従業員との雇用契約や、許認可の取得、不動産の登記などをすべて個別に遂行する必要があります。

そのため、株式譲渡と比べるとクロージングにかなりの手間と時間がかかります。

第三者割当増資におけるクロージング

第三者割当増資によるM&Aでは、以下作業をクロージングとして遂行します。

  1. 売り手による新株の発行および交付
  2. 売り手による対価の支払い

株式譲渡とは違い、新株の発行・交付が必要となる点に注意しましょう。

またクロージングとは関係ありませんが、譲渡制限を設けている会社や一部の公開会社では特別決議が必要です。

M&Aの手続き全体で言うと、株式譲渡よりも手間がかかるので注意を要します。

関連記事:M&Aの種類とは?分け方や各種類の特徴を徹底解説!

M&Aのクロージングを成功させるコツ

最後に、M&Aのクロージングを成功させるコツを3点お伝えします。

実際にM&Aを検討している方は、ぜひ参考にしていただければと思います。

スケジュールに余裕を持たせる

前述したように、クロージングにあたっては書類の準備や契約の移転、株式の発行など、たくさんの作業を行わなくてはいけません。

本業と並行しながらクロージングの準備を遂行する必要が有るため、クロージングの期間には余裕を持たせておくのがベストです。

クロージングの期間に余裕がないと、間に合わずに相手方に迷惑をかけたり、焦って必要な資料を揃え忘れるリスクが有るので注意しましょう。

価格調整条項を最終契約書に盛り込む

最終契約の締結からクロージングの間に、売り手が保有する運転資本や在庫、純資産は絶えず変動します。

そのため、最終契約の時点で確定した売買価格が、クロージングの時点では適切でなくなるリスクがあります。

そこでM&Aの実務では、クロージング時点で売買価格を調整できる旨(価格調整条項)を最終契約に盛り込む場合があります。

運転資本や純資産などに大幅な変動が生じると予想される場合には、価格調整条項を盛り込むべきか検討しておきましょう。

専門家の力を借りる

M&Aのクロージングには、法律や会計などの専門知識が少なからず必要となります。

思わぬトラブルを避けるためにも、弁護士や公認会計士、M&Aアドバイザーなどの専門家の力を借りるのがベストです。

専門家の力を借りた上でクロージングを遂行すれば、スムーズかつトラブルなくM&Aの作業を済ませることができるでしょう。

M&Aのクロージングまとめ

売り手と買い手双方にとって、クロージングはトラブルなくM&Aを成功させる上で不可欠なプロセスです。

専門知識を持つプロの力を借りつつ、気を抜かずにクロージングを遂行しましょう。

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