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事業承継問題とは?中小企業が事業承継で直面する問題を詳しく解説!

2020.09.22 事業承継

全国各地の中小企業では、経営者の高齢化により事業承継のタイミングを迎えています。

しかし一方で、中小企業の事業承継をめぐってはいくつか深刻な問題が取り沙汰されています。

今回の記事では、中小企業が事業承継で直面する問題を解説します。

中小企業が直面する「事業承継問題」とは

中小企業が直面する事業承継問題とは、一言でいうと「後継者不足」です。

東京商工リサーチが公表しているデータによると、後継者が決まっていない中小企業の割合は55.6%に上るとのことです。

およそ半数以上の中小企業が、後継者が決まっておらず、事業承継を進められない問題に直面しているわけです。

また、候補者はいるものの何かしらの要因により、スムーズな引き継ぎが困難となっている中小企業も少なくありません。

たとえ後継者が決まっていても、最終的に株式や経営資源の引き継ぎを済ませないと、事業承継を果たしたことにはなりません。

スムーズに準備を進めないと、ある日突然先代経営者が体調を崩したり亡くなってしまい、事業の続行が困難となり得ます。

経営者はもちろん、働いている従業員や取引先にも深刻な影響を与えかねないため、事業承継の問題には優先的に対処しなくてはいけません。

参考:2019年「後継者不在率」調査 東京商工リサーチ

具体的な問題点

では、なぜ中小企業では事業承継が進まないのでしょうか?

事業承継が進まない理由としては、下記4つの理由が考えられます。

親族や社内に適切な後継者がいない

基本的に事業承継は、親族内または会社内の人を後継者に選定します。

そのため、親族や社内に経営者としての資質や能力を持つ人材がいないことは、事業承継を妨げる大きな問題となります。

また、適切な後継者がいても事業承継を引き受けてもらえないケースも少なくありません。

特に親族内承継の場合、「子供が別の仕事をしたい」とか「継ぐメリットがない(経営状態が良くない)などの理由で、子供や孫に事業承継を断られやすいのが現状です。

後継者教育に時間がかかる・難しい

後継者教育に時間がかかる(難しい)点も、中小企業が事業承継で直面する問題の一つです。

会社の経営を担う後継者を育成するには、経営ノウハウや理念、実務的な業務スキルなどをすべて教え込む必要があります。

こうしたスキルやノウハウをすべて習得するのは、決して簡単ではありません。

また後継者教育には、平均して5年〜10年ほどの期間がかかると言われています。

難しい上に時間がかかるため、後継者教育に本腰を入れられない経営者の方は少なくありません。

資金不足

事業承継を実施するにあたっては、多額の資金が必要となるケースが大半です。

たとえば親族内承継の場合、相続税や贈与税の支払いに資金が必要となります。

一方で親族外承継では株式の買収資金、M&Aでは仲介会社への手数料でそれぞれ多額の資金を要します。

準備を進める上で十分な資金がないのは、事業承継の進行を妨げる深刻な問題となり得るので注意です。

他の相続人とのトラブル

相続人が多い場合の事業承継では、他の相続人とのトラブルが大きな問題です。

一定範囲内の相続人には、最低限受け取れる遺産の割合(遺留分)が保障されています。

よって、他の相続人が遺留分を請求することで、後継者に対して会社の資産や株式をすべて譲渡できなくなるリスクがあります。

事業承継後の経営に大きな支障をきたすため、後継者に事業に必要な資産や株式を確実に引き継げるようにしましょう。

事業承継問題の解決策

事業承継の問題では、下記4つの解決策が有効です。

早めに事業承継の対策を始める

事業承継の問題を防ぐ上で、もっとも重要なのは早めの対策です。

事業承継では、後継者の選定や教育、資金の確保など、手間のかかる手続きがたくさんあります。

すべてを終わらせるには多大な時間を要するので、先代経営者が健康なうちに準備を始めるのがベストです。

早めの準備を心がければ、万が一後継者が見つからない場合に、M&Aなどの選択肢を検討できます。

また、後継者教育や資金の確保も、早めに対策を講じれば前述したような問題を防げるでしょう。

事業承継の選択肢を幅広く視野に入れる

適切な後継者が見つからない問題に対しては、事業承継の選択肢を幅広く視野に入れるのが有効です。

例え親族や会社内に後継者がいなくても、まったくの第三者に会社を売却すれば実質的に事業承継を果たせます。

「会社を売る」という行為には、拒否反応を示す方も少なくありません。

ですが、廃業して従業員が職を失ったり、取引先や顧客が自社の商品・サービスを利用できずに迷惑を被るよりは良いのではないでしょうか?

従業員や取引先、顧客のためにも、M&Aによる事業承継を視野に入れるのをオススメします。

税制や補助金・銀行からの融資等の積極的な活用

事業承継で不足しがちな資金に関しては、税制や補助金、銀行からの融資などを積極的に活用すると良いでしょう。

たとえば「事業承継税制」を活用すれば、条件を満たすことで相続税や贈与税の納税を100%猶予してもらえます。

より厳しい条件を満たせば、猶予していた税金を免除してもらえるケースもあります。

また、返済不要の事業承継補助金や普段懇意にしている銀行から融資を受ければ、後継者の買収資金や納税資金をまかなえるでしょう。

遺言で後継者に事業用の資産が集中するようにする

「相続トラブル」に関する問題に対しては、遺言で後継者に事業用の資産が集中するように明記すると解決できます。

というのも、遺産相続では遺言書の内容が原則最優先されるためです。

自宅や経営者個人の現預金を他の相続人にすべて相続させて、すべての事業用資産や株式を後継者に相続させるようにすれば、遺留分の請求を未然に防げます。

特に株式に関しては、会社の意思決定(経営権)を左右するものですので、原則すべてを後継者に相続できるようにしましょう。

まとめ

後継者不足や事業承継がスムーズに進まない背景には、適任な後継者の不在や資金不足などの問題点があります。

こうした問題点を解決するには、早めの事業承継対策や親族外承継やM&Aの活用、税制や補助金の有効利用などが効果的です。

中小企業にとって後継者に事業を引き継ぐ行為は、長年積み上げてきた実績やノウハウを後世に遺す上で不可欠です。

事業承継を無事果たせば、経営者のみならず仕事を続けられる点で従業員や取引先にとってもメリットが大きいです。

現時点で事業承継の問題に直面している経営者の方は、ぜひ今回ご紹介した解決策を実践してみてください。

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