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事業承継税制をわかりやすく解説【メリット・デメリットや要件】

2020.10.20 事業承継

事業承継では、自社株の承継にあたって多額の税負担が生じます。

そんな税負担を軽減する手段として有用なのが事業承継税制です。

今回の記事では、事業承継税制の長所・短所、条件、手続きをわかりやすく解説します。

事業承継税制とは

事業承継税制とは、中小企業で後継者が自社株を引き継いだ際に、相続税や贈与税の一部または全部について、納税の猶予・免除を受けられる制度です。

平成30年度の改正による変更点

平成30年度の改正により、事業承継税制は従来の「一般措置」に加えて「特例措置」が新設されました。

下記の表にて、一般措置と特例措置の違いをわかりやすくまとめてみました。

  一般措置(改正前) 特例措置(改正後)
対象となる株式数 総株式の3分の2まで 全株式
納税猶予割合 相続税80%、贈与税100% 100%
後継者の人数 1人 最大3人
相続時精算課税の適用 60歳以上の者から20歳以上の推定相続人(直系卑属)・孫への贈与 60歳以上の者から20歳以上の者への贈与
適用期限 無期限 令和9年12月31日までの事業承継
計画策定の有無 なし 特例承継計画の提出が必要
事業の継続が困難となった場合の免除 なし あり

詳しい説明は割愛しますが、特例措置の方がより柔軟に利用できる制度となっています。

特に、すべての株式について100%の猶予・免除を受けられるように変更された点は、中小企業にとって大きなメリットと言えます。

参考:非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予・免除(法人版事業承継税制)のあらまし 中小企業庁

事業承継税制の長所と短所

事業承継税制の長所と短所をわかりやすく説明すると、以下の通りです。

事業承継税制の長所

最大のメリットは、最終的に納税が免除される可能性がある点です。

本来事業承継では、相続や贈与により数百万円〜数億円規模で税金が発生してしまいます。

これが原因で、事業承継に踏み出せなかったり、承継後の資金繰りが悪化することは少なくありません。

しかし事業承継税制を活用すれば、多額の税負担をゼロにできる可能性があるのです。

また、免除の条件を満たさなくても納税を猶予してもらうことで、「資金繰りが安定してから納税する」といったことが可能です。

事業承継税制の短所

事業承継税制には、以下5つの短所もあります。

  • 手続きが面倒
  • 条件が複雑
  • 取り消された場合の税負担が大きい
  • M&Aを実施困難となるリスク
  • 対応できる専門家が少ない

税負担を軽減できる点は大きな魅力ですが、一方で多種多様なデメリットがある点は無視できません。

より詳しく事業承継税制のデメリットを知りたい方は、下記の記事を参考にしてください。

関連記事:事業承継税制で注意すべき5つのデメリット

事業承継税制で納税の猶予を受けるための主な条件

事業承継税制で納税猶予を受けるには、主に「会社」、「後継者」、「先代経営者」について、それぞれ条件を満たす必要があります。

他にも細かい条件はあるものの、まずは上記3つの条件を知っておくことが大切です。

この章では、それぞれの条件についてわかりやすく解説します。

会社の条件

会社が満たすべき条件は主に以下の2つです。

  • 中小企業基本法における中小企業者に該当する
  • 風俗営業会社や資産管理会社でない

特に重要なのは1つ目の条件です。

業種によって、中小企業と認められる従業員数や資本金の額に違いがあるので、あらかじめ確認しておきましょう。

参考:FAQ「中小企業の定義について」 中小企業庁

後継者(受贈者・相続人)の条件

事業承継税制を利用する後継者は、主に以下の条件をクリアしなくてはいけません。

  • 相続または贈与を行う時点で、後継者および後継者と特別の関係がある者(親族など)で総議決権数の50%超の議決権を有する
  • 相続開始日の翌日から5か月以内に会社の代表権を持つ(相続)
  • 役員の就任から3年以上を経過している(贈与)

先代経営者(贈与者・被相続人)の条件

一方で先代経営者は、以下の条件を満たす必要があります。

  • 会社の代表権を有していた
  • 贈与または相続開始の直前において、先代経営者および経営者と特別の関係がある者(親族など)で総議決権数の50%超の議決権数を有し、かつ後継者を除いた人の中で筆頭株主であった
  • 贈与時に会社の代表権を有していない(贈与)

※今回は主要な条件のみをご紹介したため、実際にはより細かい条件のクリアが必須です。

猶予されていた相続税・贈与税が免除となる条件

猶予されていた相続税や贈与税は、一定の条件を満たすことで免除されます。

相続税と贈与税それぞれについて、免除となる条件をわかりやすくお伝えします。

相続税の免除を受ける条件

事業承継税制を利用した後継者が死亡した場合に、相続税の免除が認められます。

また、特例措置では以下の条件をクリアした場合にも、同様に相続税が免除されます。

経営承継期間内にやむを得ない理由(後継者が障害者手帳の交付を受けるなど)で会社の代表権を有しなくなり、「免除対象贈与」を行う

  • 経営承継期間(5年)の経過後に「免除対象贈与」を行う
  • 経営承継期間(5年)の経過後に破産手続開始の決定などがある
  • 経営承継期間(5年)の経過後に事業継続が困難な一定の事由が生じ、会社の譲渡や解散を行う

贈与税の免除を受ける条件

先代経営者または後継者が死亡すると、贈与税の免除が認められます。

また、特例措置では相続税とほぼ同じ条件をクリアすることで、贈与税が免除されます。

事業承継税制の手続き

最後に、事業承継税制を活用するための手続きを簡単に説明します。

事業承継税制を利用するには、下記4つの手続きを順に行わなくてはいけません。

  • 手順1:特例承継計画の策定・提出・確認(特例措置のみ)
  • 手順2:認定書の写しを提出
  • 手順3:認定申請の実施
  • 手順4:継続報告書を年1回(6年目以降は3年に1回)提出

見てもらうとわかる通り、事業承継税制の利用にあたっては難しい手続きをこなさなくてはいけません。

特に特例措置の事業承継税制では、計画の策定が必要となるので独力での実施は難しいです。

したがって、事業承継税制の利用にあたっては、制度に精通している専門家(税理士など)に相談するのがオススメです。

関連記事:事業承継における税理士の役割は?依頼するメリットも解説

事業承継税制のまとめ

わかりやすく伝えたものの、事業承継税制は複雑な制度です。

したがって利用にあたっては、制度に精通している税理士などの助力を得るのがベストとなります。

また、後継者がいない場合には、そもそも事業承継税制の利用が困難となります。

後継者が社内や親族にいない場合には、M&Aによる事業承継も検討するのがオススメです。

弊社では、無料でM&Aによる事業承継に関するご相談を承っています。

ぜひお気軽にお問い合わせください。

関連記事:事業承継とは?継承との違いや成功のポイントを解説!